資産防衛の日々

投資歴17年:独自のルールに基づき割安成長株に中長期投資をしています。臨床工学技士として病院に勤めて4年後に「専業投資家」として独立。宝塚ファン。

#5 業績と財務:中長期投資マニュアル

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【1】注意事項

1.当記事は2017年3月14日Amazonで出版した「中長期投資マニュアル」をアップデートしていく連載となります。アップデートする理由としては、伝えきれていない箇所がたくさんあると感じたからです。このままでは個人的に気持ち良くないので、現在出版を止めています。ブログで内容をアップデートしていきます。

2.ベースは中長期投資マニュアルと変わりません。

3.中長期投資マニュアルはあくまで私のマニュアルですので推奨するものではありません。私のやり方で使えると思った箇所だけ使ってもらえればと思います。私が正しいわけではありません。投資家それぞれ勝ちパターンを持っているからです。自分のやり方を大切にしてください。

4.各記事で銘柄を挙げることがありますが推奨ではありません。2017年3月出版時に掲載した銘柄も再度検証します。しかし、それだけでは古い感じが残ってしまうので、新規の銘柄も掲載します。


【2】今回の記事で例に挙げる銘柄

[2017年3月出版時掲載銘柄]
ステップ(9795)

[2020年6月追記銘柄]
JBCC(9889)

【3】業績が良い会社

私の場合、中長期投資では業績が良い会社を選びます。株価は短期的には需給ですが、中長期的には企業価値に基づいて形成されるからです。しかし、これはあくまで基本ルールです。見かけ上の業績や財務が悪くても、会社の状況が大きく変わっていたり、一時的な業績悪化で株価が叩き売られていてバーゲンセールになったりと、業績や財務が悪い会社にも投資すべきタイミングがあるのです。

さて、基本ルールとして、業績が良い会社を選ぶのですが、このままではあまりにも抽象的です。ですので、私にとって業績が良い会社の定義を書いておきます。

私にとって業績が良い会社。それは、「業績が”ほぼ一貫”して右肩上がり」の会社です。

あたりまえのことですが、だからこそ重要です。業績の浮き沈みの激しい会社は基本的に投資対象外です。業績が右肩上がりの会社は、何らかの強みを持っている可能性が高いと言えます。つまり「ビジネスモデルが良い」可能性が高く、むしろ、強みがあるからこそ右肩上がりの業績をたたき出していると言えます。もちろん、過去に多少伸び悩んでいても問題ないこともあります。例えば、将来のために先行投資したことで、一時的に利益率が低迷した場合、見た目の業績は悪いですが、中身は良くなっていることがあります。他にも、一時的な事業環境悪化などもあります。それらを調査するには、過去の決算短信や有価証券報告書などIRで確認します。

業績を見るときは「少なくとも過去3~5年分」「今期予想」「来期予想」の業績推移を見ます。今期予想と来期予想の数値は、基本的には会社四季報の数値をそのまま使いますが、会社側が決算短信などで最新のもの発表している場合、その内容も考慮して考えます。会社四季報の数値は強気過ぎるかもしれないし、反対に弱気過ぎるかもしれません。会社の情報から、会社四季報の予想数値の妥当性を確認できます。株価は、半年から一年以上先を予見して動くので、将来の業績予想は重要です。 しかし、会社や四季報予想はあくまで予想です。四半期ごとの決算や事業環境などから、予想を上振れるのか、下振れるのかどうかも考えるべき項目です。


■それぞれの業績をチェック

①売上高が「ほぼ一貫して右肩上がり」であるか売上高が伸びないと利益を伸ばすことが困難になります。利益が伸びないと株価も上昇しません。売上高は低成長であっても毎年着実に伸びていれば安心できます。「売上高の伸び率が 10%以上」なら高成長企業と言えます。

②営業利益が「ほぼ一貫して右肩上がり」であるか営業利益が伸びているということは本業が順調ということです。売上高が伸びていても営業利益は横ばい、ということがあります。この場合、コスト高を吸収できていないなどが考えられます。「売上高営業利益率」が高いほど、会社の稼ぐ能力が高く、「売上高営業利益率が 10%以上」なら高収益企業と言えます。

③経常利益が「ほぼ一貫して右肩上がり」であるか本業以外の収入と支出を差し引いても、利益が安定しているか確認します。「営業利益とほぼ同額」であることが望ましいです。経常利益伸び率は、営業利益伸び率とほぼ同じように成長していることが望ましいです。

④純利益が「ほぼ一貫して右肩上がり」であるか純利益は株主に残された利益で、この純利益から様々な株主還元が行われます。純利益も右肩上がりに上昇していることが大切です。なお、純利益では特別損益が加わることがあります。これに注意し、一時的な要因の有無を確認する必要があります。

⑤ 1株益が「ほぼ一貫して右肩上がり」であるか 1株益は 1株あたりの価値をみるための重要な数値です。 1株益は、株価が割安か割高かどうか知るためのPERに直結します。


2017年3月出版時掲載のステップ(9795)は学習塾を神奈川県でドミナント展開している会社です。当時、売上高と営業利益は右肩上がりで、企業価値の向上に基づいて株価上昇が形成されました。 2011年9月の株価終値は485円だったのが、2017年3月株価終値は1,531円です。その後も業績が拡大して2018年1月には1,977円の高値を付けています。直近、2020年9月期予想はCOVID-19の影響を受けて一時的に悪化しています。2020年5月株価終値は1,460円です。

[2020年6月追記銘柄]JBCC(9889)は2017年3月期売上高832億7200万円、営業利益18億5500万円、2018年3月期売上高631億700万年、営業利益20億6000万円、2019年3月期売上高588億9900万円、営業利益26億3100万円、このように減収、増益のトレンドでした。売上高が毎年減っていたので、見栄えは良くありませんでした。しかし、実は利益が出るセグメントを成長させるための構造改革だったのです。それは当時の会社計画であきらかでした。その構造改革に伴い、株価も2017年3月株価終値781円だったのが、2020年1月2,157円まで上昇しています。ついに、2020年3月期は売上高656億1800万円、営業利益34億6100万円と大幅に増収増益となりましたが、COVID-19の影響で、2021年3月期予想は売上高550億円、営業利益17億円と大幅に減収減益予想となっています。これら一時的な要因を乗り越えて、会社を成長させることができのかどうか調査することで、また勉強になるのです。ここで大事なことがあります。「会社計画なんて信じれないんじゃないの?」と言われるかもしれませんが、そこは投資家の仕事です。会社計画が信頼に値するのか調査するのです。それは過去のトラックレコードや、直近の四半期決算から通期の進捗率を調べたりするのです。さらに事業環境を考えることも大切です。会社計画を鵜呑みにするのではなく、そこから先を考えるのが投資家の仕事です。

【4】財務が良い会社

財務が良い会社は倒産しにくいといえます。たとえどんなにビジネスモデルや業績が良くても、倒産すれば意味がありません。倒産すれば株の価値は無くなります。このため、財務はしっかりとチェックします。ですが、監査をするわけではなく、あくまで株式投資なので、ざっくりと考え理解することが大事です。さらに、これはあくまで基本ルールです。見かけ上の業績や財務が悪くても、会社の状況が大きく変わっていたり、一時的な業績悪化で株価が叩き売られていてバーゲンセールになったりと、業績や財務が悪い会社にも投資すべきタイミングがあるのです。

■キャッシュフロー( CF)をチェック
①営業CFがプラスであるか営業 CFがマイナスの会社は投資しない方が無難です。できるかぎり、営業 CFがプラスになっている会社を選びます。営業 CFがマイナスということは、売上を回収できていないかもしれませんし、在庫をたくさん抱えているかもしれません。純利益は黒字でも営業 CFがマイナスだと、会社に実際にはお金が入っていません。会社の資金繰りが悪化し、事業を継続することが難しくなることが考えられます。もちろん「営業 CFがマイナスだから悪い会社」と決め付けることはできません。もしかしたら、将来を先取りして一時的に在庫を増やしているだけかもしれませんし、ビジネスの仕組み上一時的に営業 CFがマイナスになる会社もあります。しかし、中長期投資は小さなリスクであってもできるだけ排除することが大切です。営業 CFがマイナスの場合でも投資対象にするのは「この会社のビジネスモデルなら、営業 CFがマイナスになっても大丈夫」ということを理解できた場合に限ります。

②営業 CFのプラス分で投資 CFのマイナスを補えるか営業 CFのプラス分で投資 CFのマイナスを補えるということは、本業の儲けの範囲内で設備投資などをできている言え、ビジネスのサイクルが問題ないことを表しています。なお、今後の成長のために、一時的に投資 CFのマイナスが上回っている場合があります。この場合、会社の将来を考えると許容できると判断できます。ですが、それが常態化していれば要注意です。一つの目安として「 4〜 5年」です。これ以上続いていると、その会社のビジネスモデル自体に疑問を持つことになります。本業の儲けたお金を、永遠に設備投資しないといけない会社は欲しくありません。

■倒産しにくい会社を選ぶために、自己資本比率をチェック自己資本比率が高いほど、経営が安定し倒産しにくい会社と言えます。一方、自己資本比率が低いほど、不安定な会社経営を行っているということが言えます。自己資本比率は業種によって違いがあることから、同業種内での比較も有効ですが、一般的に「自己資本比率 40%以上」なら倒産しにくい会社といえます。最低ラインは「自己資本比率 20%」です。 20%を下回ってくると、将来的に経営が困難になる可能性が高くなるためです。もちろん、業種によってはその業種自体の自己資本比率が低いことがあるので、一概に線引きすることが良いとは限りません。ですが、自己資本比率が高めの会社を選ぶことでリスクを軽減できます。そもそも、自己資本比率が低いということは負債多いので、いざというときに資金繰りが苦しくなります。中長期投資では不安定な会社を避けるために、「自己資本比率 20%」をクリアしている会社にします。 もちろん、これは基本ルールであって、会社によってはこの20%ルールを撤廃することがあります。

■純有利子負債は営業 CFの10倍以下か有利子負債とは、会社が利息をつけて返さなくてはならない負債のことです。多すぎる有利子負債は、経常利益を圧迫し、最終的な利益の純利益までをも圧迫します。そうなると、株主還元するためのお金が減ってしまうため、株主にとってもデメリットです。さらに、経営の自由度も奪うことがあります。有利子負債は、現金同等物(手元資金)を差し引いて考えることができます。いざとなれば、いつでも手元資金を用いることで有利子負債を返せます。このことから、有利子負債から現金同等物を引いて「純有利子負債」を求めます。仮に、有利子負債 100億円、現金同等物 100億円の場合、実質無借金状態といえます。純有利子負債は営業 CFの 5倍以下が理想的ですが、 10倍以下でも許容することができます。例えば、営業 CFが 100億円プラスの場合だと、純有利子負債は 500億円以下であれば理想的で、 1,000億円以下であれば許容範囲内と考えることができます。