資産防衛の日々

専業投資家:独自のルールに基づき割安成長株に中長期投資をしています。臨床工学技士として病院に勤めて4年後に「専業投資家」として独立。宝塚ファン。

#3 ビジネスモデルの強みを知る:中長期投資マニュアル


【1】注意事項

1.当記事は2017年3月14日Amazonで出版した「中長期投資マニュアル」をアップデートしていく連載となります。アップデートする理由としては、伝えきれていない箇所がたくさんあると感じたからです。このままでは個人的に気持ち良くないので、現在出版を止めています。ブログで内容をアップデートしていきます。

2.ベースは中長期投資マニュアルと変わりません。

3.中長期投資マニュアルはあくまで私のマニュアルですので推奨するものではありません。私のやり方で使えると思った箇所だけ使ってもらえればと思います。私が正しいわけではありません。投資家それぞれ勝ちパターンを持っているからです。自分のやり方を大切にしてください。

4.各記事で銘柄を挙げることがありますが推奨ではありません。2017年3月出版時に掲載した銘柄も再度検証します。しかし、それだけでは古い感じが残ってしまうので、新規の銘柄も掲載します。


【2】今回の記事で例に挙げる銘柄

[2017年3月出版時掲載銘柄]
カルビー(2229)
コスモス薬品(3349)
ウィルグループ(6089)
日本M&Aセンター(2127)
全国保証(7164)
エリアリンク(8914)
日本管理センター(3276)

[2020年5月追記銘柄]
アルヒ(7198)
アルテリアネットワークス(4423)
イオンフィナンシャル(8570)

【3】良いビジネスモデル

私の中長期投資は数ヶ月〜1年、長くなると数年単位で株を保有し、資産を形成することが目的です。焦ると資産は増えません。そのために業績の裏付けとなるビジネスモデルが良い会社を選びます。 私にとっての​良いビジネスモデルとは、 1.ビジネスに強みがあり、儲けの仕組みがしっかりしている ​ 2.売上成長余地があるこの2つを同時に満たしていることが条件です。しかし、これらはベースです。絶対ではありません。株式投資は応用すべきときもあるのです。例えば、売上成長余地を考えてみます。企業によっては、見かけ上の売上が減っていても、セグメントで成長している分野があり、実は有望の会社もあります。見かけ上の売上減少に騙されないで、セグメントもキチンと分析することが大切です。そして、大事な事があります。いくらビジネスモデルが良くても、業績や財務、バリュエーションなどが良くなければ株を買う意味はありません。なぜなら株価というのは、業績やバリュエーションによって常に変動するからです。有利なときに買わなければ意味がありません。ビジネスモデルは一つの選ぶ指標にすぎません。素晴らしいビジネスの仕組みを持っているからも言って、それで株を買えば良いほど単純ではないのです。

【4】儲けの仕組みと強みを知る

それでは、例を挙げてどんなビジネスに強みがあるのか考えていきます。以降説明しているのはあくまで一例であり、非常に単純に分けています。他にもたくさんビジネスの仕組みがあるので勉強することをお勧めします。

①圧倒的なブランド力がある
ブランドと言ってもファッションとは限りません。「あのメーカーの △ △が欲しい」「同じような所もあるけれど、 △ △に行きたい」と思うような、製品やサービスが”ブランド”です。圧倒的なブランド力があれば強みになります。日用品にも普段利用しているカフェやレストランにもブランドはありますし、普段は目にしない町工場の部品にもあるでしょう。つまり、業種に関係なくブランドは存在します。ブランド力を活かして、他社同製品より価格を上げても売ることができていれば、儲けの仕組みがしっかりしていると言えます。

2017年3月出版時掲載銘柄のカルビー( 2229)はポテトチップスで有名な会社です。スーパーマーケットに行って、お菓子売り場にカルビーのポテトチップスが置いてなかったら、不思議に思いませんか。カルビーのポテトチップスはだれもがお菓子売り場で浮かぶ商品なので、ブランドを持っています。もちろん、「圧倒的なブランド力があれば、投資してもよい」ということではありません。2つめの条件の「売上成長余地」も必要ですし、後に説明する業績、財務、計画の進捗率、バリュエーションも見ることが重要です。あくまで例として銘柄を挙げています。その後、ブランド力は健在ですが、業績が伴っておらず1株益も横ばいです。これでは株価が上がりようがないので、1株益を伸ばすビジョンが必要です。


②規模が大きい  
市場占有率が高い似たような製品であふれている場合、生産力や調達力などの規模が大きい会社が有利になります。このような、品質での差別化が難しく、どれも似たような製品を「コモディティ商品」と言います。例えば、歯ブラシ、ゴミ袋、包装紙などです。コモディティ商品の場合、消費者は少しでも安い物を買う傾向が強いので、価格競争になり会社の体力勝負になります。こうなると、必然的に規模が大きい会社が有利になります。規模が大きい会社は、買付コスト、物流コスト、販売網などでメリットを活かして低価格勝負を実行します。低価格勝負では、小さい会社は太刀打ちできません。また、市場で占有率(シェア)が高いとビジネスは有利に進みます。製品の購入やサービスの利用を考えたとき、最初にシェアが高い商品やサービスが頭に浮かぶからです。例えば、地域を独占しているスーパーマーケットやドラッグストアは、市場占有率を高め顧客の囲い込みに成功することが大切です。

2017年3月出版時掲載銘柄のコスモス薬品(3349)は九州を地盤にドラッグストアを展開している会社です。 2010年 3月 30日の株価は 1, 932円でした。 2010年当時、規模が大きいメリットを活かし低価格にでき、さらにドミナント戦略を駆使してシェアを拡大し続けていました。売上成長余地もあったので、良いビジネスモデルでした。 2016年10月には株価高値は 23, 750円を記録しています。今のところ、2017年以降も業績は右肩上がりで、それに伴い株価も分割をこなして上昇しています。分割考慮後の2010年3月株価終値1,007円、2017年3月株価終値10,870円、2020年5月株価終値15,470円です。なんと2010年3月から15倍以上になっています。


③スイッチングコストが高い
スイッチングコストとは、他のサービスや製品に切り替える際の費用と手間です。スイッチングコストが高い場合、顧客は他社へ切り替えにくく、顧客を囲い込むことができるという強みになります。例えば、クレジットカードで公共料金や携帯電話料金の引き落としをしていたら、他のクレジットカード会社に切り替えるには手間がかかるので躊躇します。同様に、携帯電話の切り替えも手間がかかるのでスイッチングコストが高いといえます。

2017年3月出版時掲載銘柄のウィルグループ(6089)は人材派遣や業務請負等の人材サービスを展開している会社です。同社は、一般派遣、ハイブリッド派遣、業務請負、というサービスを提供しています。一般派遣は通常の派遣と同様なのでスイッチングコストは低いですが、ハイブリッド派遣と業務請負は、その仕組みから顧客との結びつきが強固になります。簡単に説明すると、ハイブリッド派遣は同社の正社員が常駐し、他の派遣スタッフを指揮し現場の中核的存在になっていきます。業務請負は、その名のとおり業務自体を請け負います。そのため、同社のハイブリッド派遣と業務請負はスイッチングコストが高く、他社に切り替えにくいビジネスモデルだと言えます。 2017年3月株価終値945円だったのが、2018年2月株価高値2,139円までありましたが、2020年4月株価終値は649円です。コロナショックにより、急速な景気悪化を見越しているのです。人材関連は、景気悪化に弱いのです。


④トールゲート(関所ビジネス)
何かをしようとした際、その製品やサービスを利用せざるをえないビジネスのことです。企業や消費者が利用する毎に儲かります。

[2020年5月追記銘柄]アルヒ(7198)はフラット35で圧倒的なシェアを誇る会社です。一般的に家を買うときにはローンを使うわけですが、そのときに固定金利のフラット35という手段があるのです。フラット35の市場は毎年安定しているので、同社のシェアが上がれば上がるほど関所となり手数料が入る仕組みです。他にも回収業務や受託ビジネスなどを手掛け、ローン帝国を築きつつあります。2020年4月株価終値は1,268円です。

出版時2017年3月掲載銘柄の日本M&Aセンター(2127)は中小企業向け M& Aで圧倒的な存在の会社です。 M&Aには専門的な知識が必須になるので、専門の会社に依頼することになります。同社は全国規模にネットワークを持っていて、後継者問題を抱えている全国の中小企業から依頼があります。 今のところ、2017年以降も業績は右肩上がりで、株価も2017年3月終値1,810円だったのが、2020年4月株価終値は3,555円です。相場が落ち着いてきた本日終値は4,330円です。

出版時2017年3月掲載銘柄の全国保証( 7164)は民間金融機関の住宅ローン向けに保証事業を手掛けている会社です。独立系では最大手となっており、ほぼすべての業態の金融機関と提携しています。最近では保証会社を通して住宅ローンを借りることが増えています。家を購入する際の関所ビジネスと言えます。今のところ、2017年以降も業績は右肩上がりですが、株価は3,500〜5,000円を挟んでのレンジです。


⑤ストックビジネス
ストックビジネスストック( stock)とは「蓄える」という意味です。会員を確保することや顧客と契約を結ぶことで、継続的に利益を得ることができます。会員や顧客を増やすことで、積み上げ式に収益が増えていきます。例えば、通信事業、電力・ガス事業、介護事業、塾事業などがストックビジネスと言えます。

[2020年5月追記銘柄]アルテリアネットワークス(4423)は光ファイバー網を保有して通信サービスを展開しています。売上の90%以上はリカーリング型で月次請求となっています。つまり、継続的に利益を得る安定したストックビジネスの代表的な会社です。2018年12月上場直後の株価は1,000〜1,200円で揉み合っていましたが、契約の積み上げにより、業績は拡大して、株価も右肩上がりで2020年5月終値株価は1,983円です。

[2020年5月追記銘柄]イオンフィナンシャルは(8570)は銀行やクレジットカードを展開しています。国内と海外で順調にカード会員を増やし、継続的に利用してもらえるビジネスが拡大しています。サブスクリプションではありませんが、会員は継続的にクレジットカードを利用してくれます。2020年コロナショックにより、急速な業績悪化を織り込み株価は1,000円近辺とリーマンショック水準まで落ち込みました。貸し倒れで利益が吹っ飛ぶ可能性があるからです。しかし、これらは一過性の問題であり、同社が潰れなければ問題がありません。2020年4月株価終値は1,130円です。

2017年3月出版時掲載銘柄のエリアリンク(8914)は収納用のコンテナなどのストレージ事業を展開している会社です。立地に応じた設備を設置することで、利用者から定期的に賃貸収入を得ることができますが、一時攻めの姿勢でストレージの販売に舵を切りました。その勢いもあり、2017年3月終値1,485円だったのが、2018年5月高値は4,225円まで急騰しました。しかし、当然、その販売の勢いは続かず、期待が剥がれ株価は急落。原点に戻り、ストックビジネス重視に舵を切った同社の株価は、2020年4月終値893円まで調整しました。株は買ったら終わりではなく、継続的に調査する重要性が分かります。

2017年3月出版時掲載銘柄の日本管理センター( 3276)は賃貸住宅の一括借上げを提供している会社です。顧客との契約が続くかぎり、継続的に収益を得ることができます。株式分割を考慮すると、 2014年には 500円付近だった株価が 2015年には一時 2, 000円以上にまで上昇しています。​その後、 2017年 1月に 1,350円付近まで下落調整しています。大きな株価上昇のあとに大きな下落調整が訪れています。その後、売上は伸びていますが、利益は横ばいです。株価も横ばいとなっています。

中長期投資は「良いビジネスモデルの株を買えば終わり」ではありません。継続的に調査して、状況が変わらないのか注視するのです。会社の状況は変わります。それに適応していく必要があるのです。状況が変わればオサラバです。2つめの条件の「売上成長余地」も必要ですし、後々説明する業績、財務、計画の進捗率、バリュエーションも見ることが重要です。さらに、株価が上昇することで、割高になれば利益確定もしていきます。そして、また割安になれば買い戻せばいいのです。売買手法については後々説明します。